数年前から楽器店のセミナー案内などで目にしていた全音のピアノ・アドヴェンチャーというテキスト。
当時は新たなテキストを検討したいという気持ちもなく、楽器店の書棚に並んでいるのを見てもスルーしていました。
そんな折2020年の緊急事態宣言で対面レッスンが中断し、音源付きのテキストならお家での練習時間にアンサンブルもできて楽しいかな、と試しに取り寄せたのがピアノ・アドヴェンチャーとの出会いでした。
実際に手に取ってみるとこれはすごい!
「レッスン&セオリー」では、こども目線での楽譜のしくみやリズムの説明、クラシックからポップス民族音楽まで多彩なアレンジのアンサンブル音源、ハイドンからモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーといった大作曲家のメロディの断片が曲に用いられたり(バッハが登場していなかったのは理由があってのことなのでしょうか…)音域の違いや音の減衰に子供が自然に気づくような仕掛けがあって、教える側も楽しめるテキストなのです。
またもう一冊の「テクニック&パフォーマンス」では芸術性に通じるテクニックを導入段階から具体的に指導できるような作りになっていて驚きました。これが欲しかった!このように言うと伝わるんだ!という発見があります。
改めて「テクニック&パフォーマンス導入書」の巻頭に書かれた「先生と保護者の方へ」を読むとこのシリーズの執筆者のフェイバー夫妻が目指したものが見えてきます。
以下引用です。
♦テクニック
ピアノ演奏は、指で弾くだけではありません。
身体や腕、手首、指すべてを使って弾くテクニックが必要です。
この「テクニック&パフォーマンス」では、高度なピアノテクニックを、生徒が理解しやすいたとえを使いながら、初歩の段階から学習します。
一度、悪いクセがついてしまうと、後から修正することは困難であるため、早い段階から正しいテクニックを身につけることが重要です。
『ピアノ・アドヴェンチャー』では、レベルの応じた「テクニックのひけつ」を用いて流暢な演奏に導きます。
この「テクニックのひけつ」は準備練習として毎日行います。
準備練習、練習、エチュードを組み合わせて練習を繰り返し行うことで、正しいテクニックを確実に身につけることができます。
♦パフォーマンス
ピアノの演奏には、タッチや音色づくりのためのコントロールが必要です。
ピアノ演奏の目標は芸術性であり、テクニックはそれを実現させるための手段です。
「テクニック&パフォーマンス」では、各ユニットに「エチュード」と「パフォーマンス」の曲があり、テクニックと芸術性を同時に学びます。
これらの曲は、「テクニックのひけつ」を使って豊かな音楽表現を引き出すために書かれています。
よいテクニックは、注意深く繰り返し練習することで身につきます。
テクニックのしくみを理解して効果的な練習をすることは、正確かつ流暢な演奏への近道です。
また、良く聴くことも重要です。「耳」を使った学習により芸術性に導きます。
引用終わり。
ウイリアム・ギロックの導入期の作品にもフェイバー夫妻の言葉と同じような意図を感じますが、ギロックにもそれに連なるキャサリン・ロリン、マーサ・ミアー等にもテクニックに特化したテキストはないですよね。
話が飛びますが、ギロックと言えば時々見ているモスクワのミラ先生の公開レッスン動画でも小さい生徒のレッスンにギロックが使われていて驚いたことがあります。
あれだけ充実した教育システムが整っている国なのでアメリカの作品は使わないかと思ったら…。
バッハから古典のソナチネ、チェルニー等のエチュード、シューマンなどロマン派小品はもちろんのこと、お国のチャイコフスキー、プロコフィエフなどがよく選ばれていて、でも意外なことにカバレフスキーはあまり取り上げられず、ブルグミュラーはこれは予想通りでしたがほぼ使われていないようですね。
Marchenko Mira先生のチャンネルはこちらです。
https://www.youtube.com/@marchenkomira464
先生のレッスンの様子を見ていると、ロシア語は全く分かりませんが子どもの成長過程で何を大事にして、何を後回しにしてよいか、について考えさせられます。