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京都フランス音楽アカデミー

もう二か月前になりますが、京都フランス音楽アカデミーを聴講してきました。

年度末で何かしら予定が入り毎年見送っているうちにコロナ禍、待ち続けた末の初訪問となりました。

3月下旬は例年ならお花見シーズン、なのに今年は春が足踏みしたままなかなか訪れなず、昼間の気温は10度を超えるか超えないか、さらに連日本降りの雨。

 

関西日仏学館で開催されるこのアカデミー、建物に足を踏み入れると日本とは違う空気が流れていて遠い日にエコールノルマルの講習会に参加した時のことを思い出します。

 

ピアノのマスタークラスはエマニュエル・シュトロッセ、クレール・デゼール、ブルーノ・リグットの3クラス。

 

シュトロッセの響きのバランスの良さ、自然で生き生きとしたフレージングに耳が開かれる感じ。

シューベルトのソナタからシンフォニーのように様々な楽器の音が聴こえてくる。

お名前存じ上げなかったのですが室内楽にも定評があり東京・春・音楽祭やラ・フォル・ジュルネにも度々出演、来日も多いようなのでぜひ一度リサイタルに出かけたい。

 

クレール・デゼールの公開レッスンはラヴェルのオンディーヌ。

一曲をワンフレーズととらえる、時には小節線にとらわれない大きな流れを作ること、音の多さに惑わされずLent の指示を守ること、オクターブの下の音も聴くことで音楽の変化をつけること、など。具体的に。

受講生に「レッスンでは時間がかかるから、後で良い指使いを教えるわね」と。左右で弾き分けたほうが楽なところがいくつかあるみたい。

 

ブルーノ・リグットのレッスンは面白い、という噂はあちこちで聴いていたけれど初めてレッスンを聴いて、こういう事か!と。

若い受講生の中に眠っている感性を目覚めさせるような導き。

その目覚めが真に自分のものになるか、一時の幻に終わるかはともかく自分にこんな演奏ができるんだ、という発見は何かを変えるはず。

演奏中に「あなたが演奏するのですよ」と何度も声をかけていたけれど、確かにコンサートやコンクールを聴いていて、隣に怖い先生の影が見え隠れする、誰が弾いているのかわからないような演奏に出くわすこともあるからなぁ。

 

併せて聴講した声楽やヴァイオリンクラスも温かく、妥協のないレッスン、レジス・パスキエのクラスの受講生は仙台国際音楽コンクールの配信を聴いて素敵だな、と思っていた方…苗字が珍しくて記憶に残っていて…その時は入賞を逃していたのですが、その後ロン・ティボーで入賞されているとのこと。素晴らしい!レッスンは先生と生徒の域を超えて音楽家同士の魂の交流という感じでした。